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第26話 ウサギの涙

 「あたし達、あのお店にずっと通ってるのよ?毎日通って、データと睨めっこして、話して、情報集めて…そういう風なことを何年もしてきたのよ。それをね、否定されたみたいだし。常連ってね、あたしから見たら友達のことなのよね。お互いの名前も知らないけどさ、話しがすごく楽しいじゃない。家に帰ってもね、疲れた旦那は話しもしないで寝ちゃうだけだし、息子も家を出ちゃったし。友達が困りそうなのが凄く嫌なのよね」
酔っぱらいながらも、今の心情を真剣に話しているおばちゃん。
「あたしはさ、勝ってるかって言われたら負けてる額のが大きいけど、ふふふ、みんなはほら、生活とかしてるワケでしょ?だったらあんなお兄ちゃん達に負けてられないじゃないのよ、ね!?」
「……おばちゃん!!あーしは感動した!おばちゃんみたいなのが彼氏だったら…本当に良かったのにぃ!ぅぅ…」
何処で感動する言葉が出て来たのか俺には分からなかったけれど、ピーちゃんは号泣しだした。
鼻で深くため息をしながら隣を見ると、センプロさんも泣いていた。
「えぇっ!?」

思わず口から出てしまった。
「おばさん、おばさん…僕のおばさん…」
おばちゃんの視線が俺にくる前に、出来れば泣きたかったけれど間に合わなかった。
「ほら、あんたはどーなのよ?あんなお兄ちゃんに馬鹿にされたままでいいの!?あんただって生活かかってるんでしょ?この辺は他にお店ないんだから、頑張んなさいよ!」
「は、はい」
「あーし、決めた!」
ピーちゃんがグラスを持ったまま立ち上がった。
「ほぉら!立って!早く立ってよ!」
全員を立たせたいようだったけれど、センプロさんは思いの外号泣していて立ち上がれそうになかった。
それに気付いたピーちゃんが腕を取り、無理矢理起こした。
そして
「勝負しよう!」
何を言うかと思えば…
「ちょ、勝負って?」
「もうね、決めたの!決定したの!」
「だから、何を」
「アイツらと勝負すんのよ!」
そう言いながらバッグから何かを取り出して、テーブルに置いた。

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