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「よぉヒゲのおにぃちゃ〜ん、おはよ〜☆」
ゆったりとした口調で最後尾に並んだ俺に話しかけてきたのは、4人ほど前にいた酒の臭いをプンプンさせる『ポップ』と呼ばれる常連さん。
レイバンのサングラスを年中かけていて、その雰囲気が…そのオーラが…とても怖いおじさん。
正直話しかけられるのはちと苦手だったりするんだけど、やっぱり…ねぇ。
「あ、おはようございます」
話すのが苦手なのには、もうひとつ理由がある…
「お金持ってる?大丈夫?明日から新聞配達してみない?おにぃちゃん若いから、お姉ちゃん家とかいけると思うんだわ。おっほほ〜ムラムラしちゃってんだろぉ。なぁ〜暇だろ〜?」
これだ。いつも顔を合わせるとまず勧誘活動。
しかも、ターゲットをはっきり俺に絞ってるから前に並んでる人もお構いなし。
ただ、苦手と言っても「良い人」だとも思えたことがあった。
その風貌からは大半の方の予想を超えることなく、手が早い。
朝の並びではよく見かける「割り込み」と呼ばれる光景だが、このホールにもそれはあった。
爆裂AT機全盛のパチスロバブル真っ只中、新台入れ替えの日になると顔を見せたやんちゃな感じの割り込み犯は、並んでる人達お構いなしで問答無用の先頭打者になる。
その日、先頭にいたのは俺だった。
俺は文句や注意をするのが面倒なのと、トラブルに巻き込まれるのは100%ゴメンだと思っていたので、空気になりすまそうと決めていた。
けれど、運が良かったのか悪かったのか、その先頭打者の話を後方にいた人達がヒソヒソと話していたのだ。
そのヒソヒソ話しが耳にズッキュンと入ってしまったポップさん。
先頭打者までズカズカと列を抜いて到着したと思ったら、眉間目掛けて有無を言わさずロケットパンチ。
続けざまに「ちょっとおにぃちゃん、どいて〜☆」と言いシャッターに先頭打者を押し倒して蹴る蹴る蹴る。
一通り落ち着くと「火ぃ持ってるかな〜」と俺に話しかけてきた。
震えた手で、ライターを差し出した。
ポップさんと話すようになったのはそれからだった。