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第40話 餌

 とりあえず席に戻ろうと告げた。
「…私は……もう少しここに残ってから戻ります…」
涙を拭いた影響でメイクが落ちてしまった彼女の素顔は、悲しさに満ちていた。
「…まゆ毛…ないよ」
「………そんなことないですよ」
余計な事を言ってしまったかと思ったけど、彼女はほんの少しだけ笑ってくれた。

席に戻ろうと裏口からホールへ入ると、感化されているからだろうか…楽しそうな顔をしている人が大勢いることに気付いた。
そりゃ相変わらず出てない人もいるけど、それでも活気という空気は伝わってきた。
経営するという立場からすれば、俺を含めた客達は高確率で餌だ。
もちろんホールへ遊びに来ている人達は、そのことを少なからず理解している。
それでもパチンコ屋へ通ってしまう理由は…。
事情があり、夢があり、人がいる。
遊びという人もいる、生活の基盤としている人もいる……金が絡んだ場所で奇麗事ばかりが並ぶワケがないのだが、今この時だけは…。
席に戻るまで、遊技場と呼ばれる理由を考えていた。

席に戻ると、センプロさんとポップさんが順調にボーナス回数を増していた。
「おめぇ何処行ってたんだよぉ〜☆女か?人妻かぁ?て言うか見ろよこれぇ。全然ビッグがこねー!バケばっかりだってのぉ。俺はMじゃねーぞ☆」
「僕の台はブドウがいい感じだよ」
ふと隣のキャップ君達を見ると、朝とは少しだけ違って両隣でパチパチ君を見せ合って、楽しそうに話しながら打っていた。
「おめぇ早く打〜て〜よ〜☆それで、慶次組はど〜なってんだよぉ☆」
あ…。

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